ユーロの為替レート予想
ユーロ円相場は来年に入ってもユーロの上値の重い展開が続きそう。ユーロ圏の財政・金融不安の火種がくすぶり続けており、下振れリスクの軽減には時間がかかるとみられるからだ。「逃避通貨」の円に資金の向かう公算が大きい。
ユーロ安で景気浮揚狙う?財政不安で売り圧力続く
ユーロ・円の先行きを占ううえで最大のポイントはユーロ圏経済の動向だ。円の手掛かり材料は売り買いとも乏しい。財政危機に直面するアイルランドをめぐっては、EU(欧州連合)とIMF(国際通貨基金)が約850億行(約9兆4000億円)の金融支援を行うことで合意した。5月のギリシヤ危機直後に、EUとIMFが創設した総額7500億ユーロのセーフティネットが機能した格好だ。
それでも、これで危機が遠のいたと判断するのは早計だろう。ユーロ参加各国は財政立て直しに舵を切っており、緊縮政策が個人消費の重しとなるのは必至。その結果、税収が思ったように増えなければ、一段と歳出削減に取り組まざるをえない。こうした負のスパイラルをマーケットは強く警戒する。
財政危機の周辺諸国への飛び火に対する懸念も根強い。スペインなどの長期金利と対独国債のスプレッドは拡大傾向が続く。
そうなると、ユーロ圏の選択肢は限られてくる。「ユーロ安で域内の景気を立て直すしかない」(バンクオブアメリカーメリルリンチFXストラテジストの藤井知子氏)。ユーロ圏の7~9月GDP成長率は前期比0.4%増にとどまり、4~6月の同1%増から伸びが鈍化した。一段の減速を食い止めるには、域内全体の景気底上げが必要だ。ユーロ安で輸出に強いドイツ、。フランス両大国の懐を潤し、個人消費を刺激。両国から財政不安におびえる周辺諸国への観光客を増やすなどして、波及効果を浸透させるのが理想のシナリオだろう。ユーロ売り圧力はしばらく収まりそうにない。
対円での当面の下値メドは1ユーロ=105円。今年の8月と9月にも一時、105円台まで下落しており、来年3月までに再び、同水準を試す展開になると予想する市場関係者は多い。
ただ、100円を割り込むかどうかは微妙なところ。東京金融取引所のFX、「くりっく365」の円に対するユーロの買い持ち比率は約75%(11月30日現在)と、売り持ち比率を上回る。個人投資家の買いがユーロを下支えする可能性もある。